見方によれば三国志

見方によれば三国志は、一つの民俗小説ともいえる。三国志の中に見られる人間の愛欲、道徳、宗教、その生活、また、主題たる戦争行為だとか群雄割拠の状などは、さながら彩られた彼の民俗絵巻でもあり、その生々動流する相は、天地間を舞台として、壮大なる音楽に伴って演技された人類の大演劇とも観られるのである。
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 現在の地名と、原本の誌す地名とは、当然時代による異いがあるので、分っている地方は下に註を加えておいた。分らない旧名もかなりある。
十年語り合っても理解し得ない人と人もあるし、一夕の間に百年の知己となる人と人もある。
 玄徳と孔明とは、お互いに、一見旧知のごとき情を抱いた。いわゆる意気相許したというものであろう。
 孔明は、やがて云った。
「もし将軍が、おことばの如く、真に私のような者の愚論でもおとがめなく、聴いて下さると仰っしゃるなら、いささか小子にも所見がないわけでもありませんが……」
「おお。ねがわくは、忌憚なく、この際の方策を披瀝したまえ」
 と、玄徳は、襟をただす。